赤シャツ感想

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 まさか松島くんが復帰してこんなにも早く、外部舞台というステージに連れて行ってくれるなんて、復帰した直後は思わなかったくらい、ビックサプライズなキャスティングが舞い込んできたのが昨日のことの様に思い出される6月。

 

うだる様な暑さと、しんしんと降り注ぐ雨の夏を経て、肌寒さを感じる9月になり、赤シャツは幕を開けました。

 

 題材は、夏目漱石の代表作「坊ちゃん」に登場する、主人公坊ちゃんの敵役「赤シャツ」視点での物語で、松島くんは赤シャツの弟「武右衛門」。坊ちゃんなんて中学生の時に読んだっきりだよ!と慌てて原作を買い、なんとか当日の30分前に読みを終わって入場したのが功を奏したのか、内容の大逆転さがしっかりと自分の中に落ちてきて、確かに予習した方が面白さ倍増だなと実感しました。

 

カンパニーの掛け合い

 

 この舞台、とにかくカンパニーが錚々たる顔ぶれです。桐山くんは言わずもがなジャニーズの中でも舞台評価の高い人。そこに高橋ひとみさんやおかやまはじめさん、矢柴俊博さんなど、ドラマや映画で絶対一度は目にする俳優さんたちも参加し、舞台自体の完成度も確かなものでした。

 

 特に今回の赤シャツは、笑って泣ける要素がふんだんに詰まった作品。クスクスと笑えるところとしっとり心にくるシーンのコントラストがはっきりしていて飽きずに楽しむことができました。

 

 また所々に坊ちゃん原作のナレーションが入り、原作ではどの時点の物語なのかをはっきり認識することができるので、その時点での坊ちゃん側の思惑とその裏で動く赤シャツたちの心理描写を対比させて、みることができます。物語の理解度が一層深まる構成で、そしてなにより音楽がめちゃめちゃいい!!とにかくバランスの良い舞台という印象が強く残りました。

 

 そしてやっぱりベテラン勢がとにかくすごい!!

 

 私はとにかく赤シャツの下女ウシ役高橋ひとみさんと、赤シャツの同僚の野だいこ役の越村友一さんが出てくるシーンがとにかくツボでツボで....神出鬼没で盗み聞きしているウシの登場はまるで新喜劇を見ているようでしたし、野だいこの気持ちのいいくらいのお調子とり加減はもううざいのなんのというハマりっぷりで、2人の立ち回りがとてもこの舞台をよりユーモラスに仕上げているな〜と感じました。

 

 私が特に好きだったのは、うらなり先生のお見送りの会の後のくだりです。赤シャツと武右衛門が口論になり、激しい喧嘩をするシーンではありますが、越村さんと高橋さんが合間合間にユーモアに振り切って演じていることで、余計に2人の喧嘩シーンと赤シャツの苦しい思いが映えた気がしています。

 

やっぱりすごい桐山照史

 

なんといっても本当に桐山くんがすごかった!!そりゃあ絶えず舞台のオファーが来ますよねという印象です。

 

 赤シャツは、ある意味表で見せる顔と本心が違って見える役所。決して悪意を持った行動ではないのに、そこに込められた善意が全て裏目に出て、自分の本心を、本当の自分を理解して貰えないという孤独に苦しんでいる人です。

 

 シーンの重要なところで「僕はどうしたらいい...」と思い悩んでいる姿がとても印象的なのですが、そうやって本来の自分をさらけ出せるのがウシと、芸者の小鈴だけ。「ほんとはこうしたいけどでも...立場が...世間体が...」とどこか弱気でやっと素直になって行動してもそれが全て真逆の方に取られてしまうという負の連鎖に陥っていました。

 

でも正直、他の人の考察でもあったのですが、自分の本質を理解して欲しいのに、赤シャツ自身も、うらなり先生がマドンナに向ける恋心にに気づいていないとか、その人の体面だけを見ている節はあって...とてもねじれた状況です。

 

だからこそ、すごく演技にも繊細さが求められたのかな〜と思うのですが、所作をとっても声色をとっても、本当に素敵で!

 

 最後のシーン、坊ちゃんたちにボコボコにされた朝に、小鈴と話すシーンがあるのですが、不意に出た「どうせなるのなら、どうか僕の正式な妻になって下さい。」とつい本音を漏らしたところだったりもそうですし、「 ……僕は、御免だ。……真っ平だ。」と涙をこぼすシーンは本当に赤シャツに感情移入してしまいボロボロと涙が溢れてしまいました。

(余談ですが最後のシーンはもう一回ウシさん出てくるのが元々の内容ですが、今回は2人の涙で終わったのもサイコーポイントです。)

 

 桐山くんの演技を見るの初めてじゃないけど、映像と舞台ならまちがいなく舞台で映える人だなあと感じています。

 

自担の初舞台の座長がこんなにも頼もしい俳優そして、先輩で本当によかったなあと思いました。

 

自担の初舞台

 

今回はなんといっても自担の初舞台。

 

 いままでの演技仕事は、映像作品でも期間が短いものがほとんどですし、松島くんはSexyZoneの中で唯一、ジャニーズの舞台(ジャニワやドリボ等)で、メインキャストに立った経験がなく、ここまで長期間、一つの役を演じるのはほぼ初めてです。

 

 その初舞台が、感情の揺れ動く14歳という難しい年頃の役所なのは多分こちらが想像する以上に本当に大変だったと思うんですけど、松島くんの演技仕事で、初めてちゃんと武右衛門という役が松島くんという体を借りて心臓が動いている、一体になってるなあと...感じることができたような気もします。

 

 そんな武右衛門は、妾の子という複雑な生まれですが、本来は優秀な兄を心から尊敬していて、でもそんな兄が当時の価値観ではあまり受け入れられない徴兵忌避をしていたことを周りから聞いて、それが事実だったことがショックなのと同時に、自分に真実を先に打ち明けてくれなかった裏切られたような気持ちを、心に抱えていて、目の前にいる兄赤シャツの言葉を信じられなくなっていた状態でした。

 

 そんな状態の中で、赤シャツと喧嘩をして家を飛び出していくシーン。「なんで何もいってくれないんだよ...」とつぶやくところが1番印象に残っています。元々の本には含まれていない追加されたセリフだと思うのですが、散々けたたましく赤シャツに対して怒って、ポカポカ殴って、それでも何も言い返してくれないそんな兄に対しての寂しさなんか全部込めての「なんで...」がとっても気持ちが乗っていて、心が震えたシーンでした。

 

 本来であればもっと通って役が体に馴染んでいく過程を見たかった気持ちもあるんですがね...

 

 でも、松島くんがこの舞台を通して、演技のお仕事を楽しいと思えたことが本当になりよりだと思うし、温かいカンパニーに可愛がってもらえたことは間違いなく松島くんが演技のお仕事を続けていく上で支えになるものだと思うので、次松島くんがどんな役に挑むのか、どういうふうに演じるのかを見ることのできる日が非常に楽しみです。

 

やはり本がいい舞台ととってもいいカンパニーに囲まれた自担を見るのがとっても幸せだなと感じました。

 

1ヶ月間本当にお疲れ様!